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PMSにサヨナラ。女性のための代表的な生薬[トウキ(当帰、アンジェリカ)]

以前記事で紹介した西洋のハーブ”アンジェリカ”と同じ仲間に、「トウキ」というアジアの生薬があることを知りました。初めはピンと来ませんでしたが、「当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)」などの漢方薬の名前に触れて、「トウキって、この当帰か!」と頭の中の糸がつながったのでした。テレビのCMでも聞いたことのあるこんなに知名度の高い漢方薬に使われるということは、きっとすごい生薬のはず…と思って早速トウキについて調べると、想像以上に女性の強い味方となる生薬でした。中国や日本での婦人科系症状に対する効果の認知度は、西洋でのアンジェリカのそれをしのぐ程のようです。

今回は、トウキがどんな生薬なのか、PMSにどのように効くのかをご紹介していきたいと思います。

※アンジェリカ(セイヨウトウキ)については、PMSに効くハーブ[アンジェリカ(トウキ、当帰)]で、生理をスムーズに迎える を参照

トウキとは?

トウキはセリ科に分類される植物です。アジアのトウキは国によって様々な種類があり、色、大きさ、形、香りなどが少しずつ異なります。ここでは、中国で長い歴史を持つカラトウキ(唐当帰、ドンクワイ)と、日本の漢方薬への使用に認められているヤマトトウキ(大和当帰)・ホッカイトウキ(北海当帰)について触れようと思います。ちなみに味ですが、苦味とほのかな甘さがあります。ヤマトトウキは他よりも甘みがやや強めです。

カラトウキ(学名:Angelica sinensis)

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参考画像:Angelica sinensis, A. polymorpha DANG GUI -Chinese-

四川省、雲南省などで生産されている中国のトウキです。4000年以上も前から婦人科系の症状への効能が知られていたとされ、2000年以上前に書かれた中国最古の薬物書には、しっかりとその名前が記されています。”当帰”は「当に(まさに)帰る」という意味で、病弱な女性が服用すると元気になった、産後の肥立ちが悪い女性が実家から夫の元へ帰ってくることができた、あるいは自分から離れていった夫が戻ってきたなどのいわれがあるのだとか。カラトウキを使った商品は、欧米諸国の企業からもたくさん発売されており、人気はアジア圏内だけでないことが伺えます。

ヤマトトウキ(学名:Angelica acutiloba Kitagawa)

オオブカトウキ(大深当帰)
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参考画像:独立行政法人 医薬基盤研究所 薬用植物資源研究センター 植物図鑑

約1300年前の奈良時代の文献に「やまぜり」という名前で残っているようですが、漢方医学が黄金時代を迎えた江戸時代に、中国から苗を輸入するなどして盛んに栽培されるようになりました。ヤマトトウキの中でも、奈良県大深地方及び和歌山県富貴地方で生産されるものは最高品とされ、オオブカトウキ(大深当帰)と呼ばれています。昔から咳、生理、腹痛などの症状に重宝されてきましたが、現在は国内での栽培が減ってしまいました。中国などの海外でも栽培されるようになり、それを日本へ輸入して、産地を問わず日本の漢方薬へ使用されています。日本で一般的に”トウキ”と言ったら、このヤマトトウキのことを指します。

ホッカイトウキ(学名:Angelica acutiloba Kitagawa var. sugiyamae Hikino)

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参考画像:四季の山野草(ホッカイトウキ)

ヤマトトウキよりも後に生まれた品種で、明治時代の頃から北海道で生産されるようになりました。ヤマトトウキより品質は劣るようですが、栽培しやすく流通量があるので、ヤマトトウキと共に日本薬局方によって漢方薬に使用できる生薬として認められています。

 

女性の為の生薬。トウキが持つ効果

トウキの具体的な効果について説明する前に、一つ疑問が。ここで触れている3つのトウキの色や形に差があるように、効果にも何か違いなどあるのでしょうか?

それぞれの化学成分に違いが認められたという研究結果はあります。動物実験で「カラトウキの方が…」「ヤマトトウキの方が…」のような報告もありますが、それが人体へどのように影響するのかは、まだ研究段階のようです。それぞれの特徴を生かして組み合わせて使うべき、という考えもあります。効果の違いは不明ですが、いずれも昔から同じような目的に使われてきました。では、トウキの一般的な効果について説明していきます。

エストロゲンの調節

婦人科系の症状に対する効果は最も有名です。これは、トウキのいくつかの成分が、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの調節に役立つ為と考えられています。エストロゲンが少なければ増加させ、多過ぎれば減少させるということです。生理痛生理不順無月経更年期障害、そしてPMSに大きな効果をもたらします。時に不妊治療や、男性の生殖能力改善の為に使われることも。

ちなみに中国でトウキは、「朝鮮人参に次ぐ二番目の生薬」「女性の為の朝鮮人参」と言われています。朝鮮人参と言えば、漢方に詳しくない人でも一度は聞いたことのある超有名な生薬ですよね。その朝鮮人参と一緒に名前が挙がる程ということは、トウキの効能のすごさを感じずにはいられません。

血行を改善

トウキは漢方医学で、「温(穏やかに体を温め、新陳代謝を亢進する)」という性質に当てはまる生薬です。血管を広げたり、血管の詰まりを防いで、血行を良くする・体を温める・利尿などの働きがあります。PMSでもよく起こる冷え性肩こりむくみの緩和につながったり、心臓や脳の血管障害高血圧などの疾患にも効果を発揮します。また、血行が良くなることで、肌の調子も整います。

血液の強壮剤

トウキには、ビタミンB12、葉酸、フォリン酸、ニコチン酸、ビオチンなど含まれており、血液の栄養となります。赤血球を増加させて、血液量を増やす作用があり、貧血の改善に適しています。

痛みの緩和

鎮痛作用が働き、生理に関連する下腹部痛腰痛はもちろん、頭痛関節痛などにも効きます。市販の鎮痛薬に含まれる成分のアスピリンより、4~7倍の鎮痛効果があるという研究もあるようです。

イライラを抑える

トウキの持つ鎮静作用で、生理前のイライラ気分のむらを防ぎます。緊張を和らげて、不眠の症状も緩和します。

その他

保湿、抗菌、抗炎症、抗アレルギーなどの作用があり、化粧品、育毛剤、入浴剤など皮膚や頭皮の為の製品に使われることも多いです。

 

トウキを使った商品の紹介

トウキは主に根を用いた商品が多く、中国では薬膳料理の材料としても有名です。アンジェリカもルート(根)を使った商品が多いですが、西洋の一般家庭では、葉や茎を料理やお菓子などに入れ、豊かな風味を楽しむ使い方もされます。アジアと西洋で、使い方に少し違いがあるようですね。

ここでは、日本でも手に入れやすいトウキ商品をご紹介しようと思います。漢方薬に使われるトウキは、ヤマトトウキかホッカイトウキと定められていますが、他の製品でどのトウキが使われているかをチェックする際に、大分ややこしいですが、学名を頭の隅に入れておくと確実です。特に海外製品はカラトウキを使っていることが多く、”Angelica sinensis”または”Dong quai”の文字を探してみて下さい。

漢方薬

生理に関わる症状をコントロールする漢方薬には必ずトウキが入っていると言われる程、生理と関係が深い生薬ですので、PMSで漢方薬を探す場合は「トウキ」を目安にするといいかもしれません。煎じ薬、散剤、丸薬、エキス製剤の4タイプに分けて、トウキが使われている漢方薬をご紹介します。

煎じ薬

昔ながらの方法で、生薬を水で煮出して作る漢方薬です。液体なので吸収が良く、また患者の体質や症状に応じて生薬の配合を変えるなど微妙な調節も可能なので、4タイプ中最も薬効に優れているとされます。煎じる手間や強いにおい・苦味などの為に、苦手とする人も少なくありませんが、そのにおいや苦味も薬効の一部であるという研究もあるとか。「良薬口に苦し」ということわざを思い出しますね。

温経湯(うんけいとう)

温経湯はトウキ、バクモンドウ(麦門冬)、ハンゲ(半夏)など12種類の生薬から成り、生理のトラブルなど女性特有の様々な症状に用いられる漢方薬です。

こちらは”皇漢堂薬局”から販売されているお試しパックで、煎じ薬が初めてという方にぴったりですね。血行を良くして体を温める、でも手足の余分な火照りは取る、皮膚を潤す、ホルモンバランスを整えるなどの作用で、生理不順生理痛更年期障害頭痛足腰の冷えや痛みのぼせなどに効果があります。1袋を600~900mlの水で煮詰め、水の量が半分になったら出来上がり。これを1日分として、食前または食間に3回に分けて飲んで下さい。

 

トウキ根

漢方薬は通常、複数の生薬から作られていますが、”皇漢堂薬局”ではトウキ根単品とその煎じ方を紹介しています。ヤマトトウキ(ニホントウキ)の根を湯通しし乾燥させたもので、「ホルモンのはたらきを活発にし、生理不順や更年期障害などに効く」「神経の高ぶりを鎮め、イライラを抑える」とあります。煎じて飲む他に、入浴剤としてお風呂に浮かべれば、冷え性の改善にも役立つとのことです。

 

散剤

生薬を粉末にした漢方薬です。水で抽出されない成分、熱に弱い成分を持つ生薬が使われます。煎じ薬に比べて、体内での吸収がゆっくりです。そのまま口に入れるのではなく、お湯に溶いて飲むと効果が上がります。

当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)

当帰芍薬散は女性特有の症状に広く用いられ、「女性の聖薬」とも言われている漢方薬です。使われているのは、シャクヤク(芍薬)、ブクリョウ(茯苓)、トウキなど6種類の生薬。

松浦漢方”発売のこちらの商品は、月経不順、月経異常、更年期障害、産前産後あるいは流産などによる、貧血疲労倦怠下腹部痛頭重めまい肩こり動悸などの症状に効きます。腰痛足腰の冷えむくみなどにも適しているそうです。

 

丸薬

粉末にした生薬にハチミツなどを混ぜて丸く固めた漢方薬で、服用しやすいのが特徴です。散剤よりも更に吸収がゆっくりとなります。

イスクラ逍遥丸(いすくらしょうようがん)

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イスクラ産業”から発売されているこちらの商品には、トウキ、シャクヤク、ビャクジュツ(白朮)など8種類の生薬が入っています。冷え症、虚弱体質、月経不順、月経困難、更年期障害、不眠症、神経症による、肩こり疲れ精神不安便秘などの症状の改善を目的とします。

※PMSの漢方薬を検索するとたくさんヒットしますが、ネット販売しているお店が見付かりませんでした。お求めは、お近くの漢方薬を取り扱う薬局へどうぞ。

 

エキス製剤

病院や店頭などで最も一般的に置かれている漢方薬で、煎じ薬を濃縮し、でんぶん・乳糖などを加えて粉末・錠剤化したものです。持ち運びが便利で服用しやすいように作られており、現代人のライフスタイルに適していますが、作る過程で成分が蒸発してしまったり、他の漢方薬のように患者毎に配合を調節することができないので、薬効は煎じ薬の1/2~1/3程度と言われます。

当帰四逆加呉茱萸生姜湯(とうきしぎゃくかごしゅゆしょうきょうとう)

当帰四逆加呉茱萸生姜湯には、血行を良くして体を温める作用があり、特に手足の冷えが強く、体力のあまりない人向けの漢方薬です。トウキ、ケイヒ (桂皮)、シャクヤクなど9種類の生薬でできています。

クラシエ”からは錠剤タイプのものが発売されており、冷え症、しもやけ、下痢、生理などによる、手足の冷え足・下腹部の痛みなどに効果がある他、頭痛腰痛にも効くようです。

 

ハーブティー

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Yogi Tea, Woman’s Moon Cycle, Caffeine Free, 16 Tea Bags, 1.12 oz (32 g) – iHerb.com

PMS改善にYogiのハーブティ [ヨギティーウーマンズ・ムーンサイクル]”でもご紹介した商品で、毎月の生理に伴う不快感を和らげるハーブがブレンドされています。カラトウキの根のエキスの他、ホルモンバランスを整えるチェストツリーベリーエキス、発汗・利尿・むくみ解消作用のあるジュニパーベリーエキスなどが入っています。漢方薬はちょっとハードルが高いと感じる方は、このようなお茶を気軽に試してもいいですね。

 

海外製サプリメント

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Amazon.co.jp: [海外直送品] ドンクアイの根 530mg×100カプセル (16-26日分)

Dong quai(ドンクアイ、ドンクワイ)は、”当帰”を中国語で発音したもので、通常カラトウキを指します。カラトウキ根からできたサプリメントは比較的たくさんあり、ネット通販でも探しやすいです。こちらの商品の製造元であるアメリカの会社”SWANSON”のサイトを見ると、「毎月の生理に関わる不快症状を和らげる為の栄養サポート」とあります。心強いですね~。一日に1~2カプセルを、水・食事・お茶などと一緒に飲んで下さい。

 

入浴剤

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シレナボーテ清癒湯(医薬部外品) – 清心丹オンラインショップ

南三陸産の無農薬トウキ(オオブカトウキ)を含め、10種類の和漢素材だけでできています。血行を促進し、冷えを癒す温浴効果と、荒れた肌を整えて守る整肌効果を重視して作られました。ぬるめのお湯(38~40℃)約200Lに対し、1包(2袋)を入れ、手で軽く揉み出します。15~20分浸かった後20分休憩し、冷え性の方はこれを何度か繰り返して下さい。半身浴、足浴にも使えます。冷えはPMSの大敵!体を温めることで、PMSと対抗しましょう。

 

注意点

  • 子宮収縮作用があるので、妊婦は使用しないで下さい。
  • 前立腺癌、乳癌、子宮、卵巣癌のある人は避けて下さい。トウキの使用でエストロゲンが増えた場合、がん細胞を増殖させてしまう恐れがあります。
  • 血小板凝集抑制作用があるので、元々心臓や脳の病気などで抗血小板薬や抗凝固剤を飲んでいる人は使わないで下さい。
  • それぞれの商品にある使い方や注意点をきちんと守って下さい。

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Comment

  1. より:

    血液さらさらの薬を使用しています。トウキの風呂はなぜ使用しない方が良いのでしょうか?

    • Daisy より:

      コメントありがとうございます。記事の末尾にある「注意点」についてのご質問だと思いますが、この「注意点」はトウキ全体の使用に関しての注意点で、特に「お風呂がダメ」という意味で明記してあるわけではありません。少しわかりづらかったですね。ごめんなさい。林さんの「血液さらさらの薬」を常用されている場合、経口摂取でトウキを摂取するのは避けたほうがよい(薬の効き目が強くなりすぎるので)ですが、トウキの入浴剤が入ったお風呂に入る分には問題ないと思われます。ただし病状や体調にもよりますので、主治医の方にご相談されてみてください。

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